2-2. 殻斗形態の多様性

 秋の終わりが近づくと、クヌギやアベマキの樹の下に足の踏み場も無いぐらいたくさんの殻斗が散乱した光景をよく目にします。ドングリ拾いに来た人達は、総じて堅果を拾い集めるのに夢中で、殻斗にはほとんど興味が無さそうです。

 私もドングリに興味をもち始めた頃は、“ 殻斗には大小の違いはあっても、形はみんな同じである ” というイメージがありました。ところが、長年多くの個体から採集したものを見比べているうちに、殻斗にも同じ種類とは思えないほど多様な世界が存在することがわかってきました。

 このセクションでは、堅果と同じぐらい多様であるにも関わらず、普段あまり注目されていない殻斗にスポットライトを当てて、これまでに採集してきたものの中からコナラ属に限定して特徴的な形態を紹介します。同じ種類の殻斗でもそれらのバリエーションの豊かさに、みなさんもきっと驚かれると思います。

(注) 各図の殻斗の写真は、全て異なる個体から採集したものです。


コナラ(Quercus serrata)
ナラガシワ(Quercus aliena)
ミズナラ(Quercus crispula )
カシワ(Quercus dentata)
クヌギ(Quercus acutissima)
アベマキ(Quercus variabilis)
ウバメガシ(Quercus phillyraeoides)
ウラジロガシ(Quercus salicina)
アカガシ(Quercus acuta)
ツクバネガシ(Quercus sessilifolia)
イチイガシ(Quercus gilva)
シラカシ(Quercus myrsinaefolia)
アラカシ(Quercus glauca)
ハナガガシ(Quercus hondae)
オキナワウラジロガシ(Quercus miyagii)

(番外編)
 ブナやクリのように、堅果を丸ごと包み込むタイプの殻斗はどれも同じに見えますが、スダジイやツブラジイの殻斗については、成熟して割裂する前の形態が驚くほど多様です。ここでは、殻斗の鱗片が作り出す模様に着目し、それを背軸側(図2-2-A参照)から撮影したものを全て同程度のサイズになるように任意スケールで紹介します。
スダジイ(Castanopsis sieboldii)
ツブラジイ(Castanopsis cuspidata)