15. 究極の多果ドングリを求めて

 多果ドングリは、1つの総苞の中に多数の雌蕊が発現した雌花序が成長したもので、1つの殻斗の中に複数個の堅果を包含した奇妙な形をしています。私は、これまでに、クリ亜科(*)のシイ属とコナラ亜科のコナラ属のドングリで、1つの殻斗に最大3つの堅果を包含したものが実在することを確認してきました(**)
   * クリ亜科のクリ属のドングリは、一般的に1つの殻斗に3つの堅果を包含しています。但し、クリ属の中の1品種であるハコグリ [ 学名: Castanea crenata f. pleiocarpa ] については、1つの殻斗に4個以上の堅果を包含するものがあります。私がこれまでに確認した最大のものは、6個の堅果を包含していました。
  ** セクション3-1-2を参照願います。
 中生代の白亜紀から新生代にかけて、ブナ科の祖型からコナラ亜科とクリ亜科が分化したばかりの頃には、コナラ属でも1つの殻斗の中に3つの堅果をもつドングリが普通に存在していました。ところが、長い年月を経るにつれて、総苞の中の雌蕊が退化減数し、現在では1つの殻斗の中に1つの堅果が入った単果が、ドングリの標準的な形態になりました。

 このように、今では稀少な存在となった多果ドングリですが、私は今から5年前に、ドングリの中で最も繁栄しているコナラ属において、間接的なデータを元に、1つの殻斗の中に6つまでは堅果を包含し得る可能性があるという仮説を提案しました
(***)。そして、それ以来、様々な角度から探索を続けてきた結果、その仮説を裏付ける4〜6果のドングリを見つけることに成功したのです。
 このセクションには、他では決して見ることが出来ない貴重なデータや写真が満載です。ドングリに興味のある方は、ぜひ一度御覧になってみて下さい。
*** 仮説を導き出すに至った経緯はセクション3-2-1に記載していますが、セクション15-1にあらためて図解していますので、そちらを御覧下さい。
15-1. 変形ドングリに見られる多果の痕跡
15-2. 4果以上の多果ドングリの探索
15-3. 4果のドングリの形態のバリエーション
15-4. 5果のドングリの形態のバリエーション
15-5. 6果のドングリの形態のバリエーション
15-6. 4果以上の多果ドングリの雌花と幼果

(注) このセクションに掲載している写真やデータについては、一切の転載を許可しておりません。