31. 年成論

 殻斗は堅果を包むためだけのものではありません。稀に、幼い殻斗から雌花の他に花軸が出現することもあるのです(図33-1参照)。

 但し、雌花といっしょに花軸が出現した場合、殻斗は殻斗としてその形を残しますが、花軸だけが出現した場合は、花軸が成長するにつれて殻斗は徐々に苞片の集合体へと姿を変え、最終的に花軸の根元から剥落(*)してしまい、枝から分岐した普通の果軸と全く区別がつかなくなります(図33-2参照)。


* 図33-2の9月16日に撮影した写真は、果軸の根元にある殻斗(苞片の集合体)が剥落する直前の状態で、この一週間後には消失していました。

 このセクションでは、殻斗から出現した花軸(果軸)と果実(幼果含む)が織りなす、一見するとドングリとは思えない奇妙な光景の数々を紹介します。

 これらの形態は、図33-3の模式図にあるタイプA〜Dのように大別できます
(**)。タイプA〜Cはそれぞれ、図33-2のように花軸の存在が明確に確認できるもの(タイプA)、花軸の存在が辛うじて確認できるもの(タイプB)、外観からは花軸の存在が確認できないもの(タイプC)を表しています。また、タイプDは、普通の幼果から外観では確認できない極端に短い花軸が出現し、そこに幼果や殻斗が着いたものを表しています。

 タイプAについては、花軸の根元に殻斗があることを除けば、普通の花軸と比べて違和感はありません。ですが、タイプCやDについては、外観から花軸が判別できないので、それらは1つの殻斗から複数の殻斗や幼果が湧き出したような、正に究極の異形ドングリと言っても過言ではない姿形を呈しています。
** 図の中で、殻斗が着く部分を “ 花軸 ” ではなく “ 新枝 or 花軸 ” としているのは、花軸が出現するような殻斗は、花軸よりもむしろ新枝に見られることが多いからです。

 
 下記のロゴマークをクリックすれば、各々のタイプの実例がご覧になれます。お楽しみ下さい。

A     B

C     D


(注) このセクションに掲載している写真については、一切の転載を許可しておりません。
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