シラカシQuercus myrsinaefolia )
 シラカシは、現在でも単果よりも多果の発現の方が優勢な個体が数多く存在する、国産のコナラ属では例外とも言える樹種です(図30-2-1-1参照)。

 また、発現した多果が大量に結実することも決して珍しくありません(図30-2-1-2参照)。

 図30-2-1-3は、複数のシラカシから採集した果軸の例です。シラカシでは、個体内や個体間における果軸の長短が激しく、また多果が発現する割合と果軸の長さとの間に相関がないことから、現存する果軸の形態から縮小化する傾向を読み取ることはできません。

 シラカシほど多果の発現する割合は高くありませんが、それに準ずるものとして同じアカガシ亜属のアカガシ、ツクバネガシ、ウラジロガシがありますが、シラカシと同様に果軸が縮小化する傾向は認められません。これらの状況から、種として多果から単果へとドングリの形態がある程度収束してから、その次の段階として果軸の縮小化が進行するものではないかと私は考えています。
 だとすると、シラカシよりも多果の発現する割合が高いスダジイ(図30-2-1-4参照)や、現在でも多果が標準形態(*)であるマテバシイ(図30-2-1-5参照)において果軸が縮小化する傾向が認められないのは、至極当然の事と言えるでしょう。


* マテバシイ属の殻斗は、複数の殻斗が合着したものであるという一般的な解釈は間違っていると私は考えています。これについては、セクション25を参照願います。