1. 堅果を統合/分離する殻斗

 2果の殻斗には、1つの殻斗が2個の堅果をまとめて包含する堅果統合型殻斗と、2個の堅果を分けて包含する堅果分離型殻斗の2つのタイプがあります(図3-1-4-1参照)。両者の発現率を比較すると、多くの個体では前者のタイプが後者のタイプを上回りますが、両者がほぼ同じ割合で混在する個体も少なからずあります。また、稀に後者のタイプが多果の大半を占める個体
(*)もあります。
* セクション8の雑記073を参照願います。

 
 2つのタイプの殻斗が発生する要因として、殻斗の元になる器官に咲いた2つの雌花の位置関係が関与すると私は考えています。

 図3-1-4-3は、開花後1.5ヶ月が経過した2果の幼果の高さ方向の切断面です。堅果統合型殻斗をもつ幼果では、2個の幼堅果の間の距離が近接しているので、間にこれらを分離する殻斗の仕切りが成長するスペースがありません。
 一方、堅果分離型殻斗をもつ幼果では、堅果統合型殻斗をもつ幼果に比べて2個の幼堅果の間が少し離れているので、この隙間を通して殻斗の仕切りが成長します。これは幼果の切断面ですが、雌花序でも2つの雌花の間の距離に同じような傾向が見られます。

 参考までに、私が考えている堅果統合型殻斗と堅果分離型殻斗の雌花序の構造を模式図にまとめます(図3-1-4-4参照)。