5. ドングリの標本を作ろう

1. ドングリを撮影しよう
 ドングリは、成熟して樹から落下した瞬間から急速に色褪せます。また、水分が蒸発するにつれて堅果は収縮し、採集時の張りや艶は失われてしまいます。生命あるものの姿、形をそのままの状態で保存することは不可能ですから、私は落下したばかりの瑞々しいドングリの姿を、画像として残すことにしています。
 画像として残すのに、高級なカメラや撮影上のテクニックは全く必要ありません。スキャナー付きのプリンター台にドングリを載せて走査するだけで、簡単に、しかもドングリの美しさをそのままの状態で残すことが出来ます。

 スキャナーは焦点深度がかなり深いので、大きくても直径:25〜30mm程度のドングリ(被写体の半面だけが撮影されるので、奥行きは直径の約半分になります)であれば、被写体の全体像を鮮明に近接撮影出来ます。撮影した画像は、Adobe Photoshop等のパソコン用画像処理ソフトを使用して、画像修正することで、キズやゴミの無い美しいものに仕上がります。また、スキャナーで撮影する時に、ドングリの横に定規を置いて同時にスキャンすることで、採集したドングリの実寸法も記録出来ます。

 このようにして、私は採集した当日の内にドングリを撮影し、採集期、採集場所等を記入したファイル形式でデータを保存整理しています(図5-1参照)。


2. ドングリの標本を作ろう
 採集したドングリの撮影が終了したら、標本として残す為に乾燥させます。早く乾燥させるには、ドングリを煮沸して、2ヶ月程度干しておくのが有効です。参考までに、私の乾燥方法を紹介します。
(手順01)
 小なべにドングリを入れて、ドングリの高さの2倍ぐらいの水を入れます。

(手順02)
 水の状態から、中火でドングリを煮ます。
(手順03)
 沸騰(なべの底から激しく気泡が上がってくる状態)したら10秒程度で火を切ります。その後、30秒ぐらいかけて、お湯が手で触れる程度の温度になるまでゆっくりと水を注ぎます。
(手順04)
 なべからドングリを取り出して、タオルで軽く水気を拭き取ります。この時、花柱が折れたり、堅果の表面に傷がつかないように注意します。ドングリそのものがかなり熱いので、その余熱で残りの水分はすぐに蒸発します。
(手順05)
 ドングリが重ならないようにトレイに入れて、そのまま通気性のいい日陰で1週間程度乾燥させます。
(手順06)
 1週間程経過したら、日中3〜4時間程度日の当たるところで、さらに2ヶ月間乾かします。
(手順07)
 普通、6までの手順で十分乾燥します。私の場合は、標本瓶に密閉保存するので、さらにドングリを水切りネットに入れて、直射日光の当たらない軒先で4ヶ月程度放置します。
(手順08)
 約半年間乾かしたドングリの中から、疵や欠損の無い形状の整ったもの(殻斗と堅果は必ずペアで)を、図5-2のような標本瓶(100mL/250mL)に入れてラベルを貼ります。ラベルには、ドングリを撮影したファイル(図5-1参照)と同じ内容を記載します。
(煮沸/乾燥作業上の注意事項)

1. 果皮に緑色や黄色の未熟な箇所が残っているドングリは、採集後しばらく放置して、その部分が茶色に変色するのを待ってから煮沸処理します。そうしないと、未熟な箇所だけが煮沸後の乾燥過程で陥没したり、割れたりすることがあります。


2. 煮沸と冷却は、出来るだけゆっくりと行います。急激な温度変化を与えると、ドングリの外圧と内圧のバランスが崩れて、花柱やへその辺りが裂けることがあります。

3. クヌギやアベマキのような大型のドングリは、種子の保水能力が高いので、煮沸して種子を殺してから乾燥させないと中々水分が抜けません。煮沸しないで乾燥させると、割れたり、種子のもつ水分だけで発芽してしまうことがあります。ですから、標本にするのであれば、煮沸は必須だと思います。

4. シラカシやアラカシのような小さなドングリは、半年間程度陰干ししてやれば水分は蒸発します。これらのドングリを煮沸すると、乾燥期間は短くなりますが、花柱が折れやすい等の不具合が生じます。ですから、無理に煮沸乾燥させる必要はないと思います。

5. クヌギやアベマキのドングリの中には、煮沸するしないに拘わらず、乾燥させると花柱の周辺が陥没するものがあります。こればかりは、如何ともし難いです。これに該当するドングリは、大きさの割りに重量が軽いもの(実がしっかりと詰まっていないドングリ)でよく見られます。型崩れしない効果的な保存方法を御存知でしたら、どなたか御教授下さい。
* 貴重なドングリを煮沸する場合は、まず1個試行して、割れ等の不具合が無いことを確認した後、残りのドングリを煮沸することをお勧めします。