自生環境
オキナワウラジロガシは日本の固有種で、沖縄本島、奄美大島、徳之島、石垣島、西表島、久米島の6つの島に自生しています。久米島では、島内全域の山岳部に数百体規模の群落を形成していますが、他の島々のようにドングリを捕食する動物がいないことから、種子散布の主な担い手は水流によるものと考えられます。その証拠に、山岳部におけるオキナワウラジロガシの群落はいずれも澤や多雨期に一時的に水が流れる山道を中心としたエリアに集中しています(図24-A-1参照)。
以下の写真は、澤(図24-A-2、図24-A-3参照)や山道(図24-A-4参照)、山道脇にある水溜まり(図24-A-5、図24-A-6参照)や湧き水(図24-A-7参照)の周辺に立ち並ぶオキナワウラジロガシの様子を撮影したものです。
久米島は火山性の岩石が多い地質で、島内の山岳地帯はどこも大きな岩が剥き出しになっており、川や澤沿いの岩陰には上流域から流されてきたと思われるドングリが至る所に集結しています(図24-A-8参照)。
種子散布に水流を利用する場合、小さなドングリだと水流によって下流域まで一機に押し流されてしまいます。また、仮に石や落下した枝葉等の障害物で停止したとしても、上流から押し寄せる泥土に埋没して、種子としての役目を果たすことができなくなります。その点、オキナワウラジロガシのように大きなドングリであれば、ちょっとした障害物でも停止しやすく、なおかつ泥土に埋没しにくいことが予想されます。少し穿った見方をすれば、オキナワウラジロガシのドングリは種子散布に水流を最大限に利用するために巨大化したと考えられなくもありません。