16. 殻斗から現れた花軸(果軸)

 殻斗が包含するのは堅果だけではありません。非常に稀ですが、殻斗
(*)から花軸(果軸)が現れることがあるのです(図21-16-1参照)。
 * 厳密に言うと、殻斗ではなく殻斗の元になる器官です。

 図21-16-1の花軸には幼果が1つしかありませんが、外観では判別できないぐらい極端に短い花軸に、たくさんの幼果が着いたものもあります(図21-16-2、図21-16-3参照)。

 
 殻斗から現れた果軸に着いた幼果も、普通の果軸のものと同様に結実します(図21-16-4参照)。ドングリが茶色く色づく頃になると、この果軸の根元にあった殻斗は花びらが散るように消失して、普通の果軸と全く見分けがつかなくなります。この時点で見る限り、果軸が現れた殻斗というのは単なる総苞(苞葉の集合体:葉的器官)にしか見えません。
 
 ブナの殻斗
(**)を見てもわかる通り、堅果を包む殻斗は茎的器官と葉的器官が合わさった葉茎的器官です。但し、殻斗の元になる器官については、そこから出現するものが雌花か花軸(果軸)のいづれかによって最終的な形態が異なることから、殻斗の元になる器官というのは葉にも茎にも変化する一種の万能器官のようなものではないかと私は考えています。
** 雑記272を参照願います。


(追記)
 その後の調査で、シリブカガシ [ マテバシイ属 ] (***)やブナ [ ブナ属 ] (****)の殻斗からも果軸が出現することを確認しました。
  *** 雑記376を参照願います。
**** 雑記526を参照願います。