20-2. クヌギ アベマキ

 
 本土に自生する樹木で最も大きなドングリを結実するのはクヌギとアベマキです。これらのドングリは、堅果の外観から両者を100%識別することはまず無理でしょう。ですが、クヌギとアベマキの堅果にはそれぞれ特徴があり、中には一方の種類にしか見られない固有の形態も存在するので、それらのポイントに着目しながら検分すると、かなりの確度で識別が可能になります。

 両者を識別するポイントはへそと首の形状にあります。ここでは、これらの形状を具体的な数値を使って表現するために、堅果の各部位を図20-2-2のように分割して記号化しました。各々の記号の意味は、同図の右側に記載した通りです。因みに、計測には0.1mm単位まで測定可能な精密ノギスを使用しました。

 クヌギとアベマキの堅果の特徴について統計的なデータを収集するために、289体のクヌギと140体のアベマキから1個ずつ採集したドングリを検体として使用しました。また、形態の偏りを排除するために、両者とも京阪神地区にある数十箇所の公園や緑地から出来る限り色々なサイズのものを集めました。

 本来、両者とも同程度の堅果を収集して評価すべきですが、比較的他府県よりも多くのアベマキが植栽されている京阪神地区でもその数量や場所は限られているので、アベマキはクヌギの半数程度の検体数になりました。この数量差を補う為に、両者の数量を比較する場合は、必要に応じてアベマキの数量に係数 [ (クヌギ検体総数)/(アベマキ検体総数)=2.06 ] を乗じています。
 検体の大きさの目安となる堅果長(=H1)と堅果幅(=W1)は図20-2-3の通りです。横軸はH1、W1のスケール、縦軸は各々のスケールをもつ堅果の数量を表しています。


 それでは、これらの検体について調査した結果を基に、へそと首の形状に着目したクヌギとアベマキの識別方法を紹介します。
Point1. へそによる識別方法
Point2. 首による識別方法
(識別上の注意事項)

・ 上記のポイントに従ってクヌギとアベマキの堅果を識別する際には、首の形態よりもへその形態を優先して下さい。理由は、へそが長いクヌギの堅果には首が長いものの割合が高いので、後者を優先した方が識別の確度がより高まるからです。

・ 各々のポイントに記載している数値は絶対的なものではありません。あくまで、このセクション内で取り上げた検体における数値であり、より多くの個体を対象とした場合には必ず例外が存在することを留意願います。