Point1. へそによる識別方法


 クヌギとアベマキの堅果を識別する際に、へその形状が重要な要素になります。ここでは、へその形状を表現するのにへそ幅(=W2)とへそ長(=H2)の2つのパラメータに着目し、これらの有効性について検証してみます。

 まず始めに、W2値に対する両者の個数分布を図20-2-4に示します。これを見ると、クヌギの平均値がアベマキよりも若干大きいことが判ります。ただ、両者ともほぼ同じW2値の範囲に分布しているので、へそ幅で両者を識別することは出来ません。

 さらに、堅果の大きさによる影響を排除するために、各々の検体の堅果幅(=W1)に対してW2値が占める割合(=W2/W1)を算出して、同じように両者の個数分布を示します(図20-2-5参照)。この値についても両者がほぼ同じ範囲に分布しているので、これについても両者を識別することは出来ません。


 一方、H2値に対する両者の個数分布を図20-2-6に示します。この図から、アベマキは大半がへそ長の短いH2<2.0mmの範囲に分布していることが判ります。その結果、へそ長の長いH2≧2.0mmでは総検体数の88%以上をクヌギが占めます。そして、H2≧2.9mmではクヌギだけになります。

 さらに、堅果の大きさによる影響を排除するために、堅果長(=H1)に対してH2値が占める割合(=H2/H1)を算出して、同じように両者の個数分布を示します(図20-2-7参照)。H2値をH1値で規格化しても両者の傾向は変わらず、H2/H1≧0.08では総検体数の87%以上をクヌギが占め、H2/H1≧0.1ではクヌギだけになります。


 以上、堅果のへその形状についてへそ幅(=W2)とへそ長(=H2)の値を分析した結果、H2に関する2つのパラメータ [ =H2、H2/H1 ] が両者を識別するのに有効であることが判りました。参考までに、H2値に関連したパラメータと堅果の形態例を図20-2-8に示します。