一年成のドングリが結実したアベマキの枝 2

珍品度 : ★★★★

 
 ドングリの生る樹木に一年成と二年成があるのは、樹種によって物理的な構造が異なるからではありません。全ての樹種に年成の切り替え可能なスイッチのようなものが備わっていて、それぞれが誕生した当時の環境下で、いずれか都合の良いシステムを選択した結果ではないかと私は考えています。ここに展示しているアベマキの枝は、年成が切り替え可能なものであることの根拠となる物証の一つです(*)
* この殻斗が包含していた堅果は、他の検証実験に流用したので保存していません。

 
 二年成の樹木では、雌花序は開花してから受精するまでの一年近くの間ほぼ休眠状態にあるので、幼果の姿形はほとんど変化しません。ところが、その期間内に受精後に見られる姿形にまで急激に異常成長する幼果を、これまで様々な樹種で私は目撃してきました。

 とりわけアベマキについては、異常成長する幼果が全体の半数近くを占める個体があり、そういう個体をターゲットに毎年果実の成長過程をトレースしてきた結果、2021年の10月に初めて一年成のドングリの結実を確認しました。

 ここに展示しているのは、それから三年後の2024年の11月に、別の個体で一年成のドングリが結実した3本の枝の1本です。一年成のドングリは、同じ個体に結実した二年成のものから約二ヶ月遅れで成熟しましたが、外観やサイズは前者と遜色なく、堅果の重量にも有意差は認められませんでした。

(本件に関連のある記事)
・ セクション 8 ドングリ雑記 カテゴリー(年成)

・ セクション 31 年成論