季節外れに出現した雌雄両花軸を伴うウラジロガシの新枝

珍品度 : ★★★★★


 通常の花期以外にも開花する個体が属種を問わず存在しますが、アカガシ亜属の樹種でそれを目撃したのはウラジロガシが唯一です。因みに、この個体はこれまでにたくさんの多果を発現してきたものです。この展示品は、2018年に採集したものの中で、雌雄の両花軸が併存した極めて珍しい新枝です。

 
 コナラ亜属の樹種では、季節外れの開花を頻繁に目撃してきましたが、そこで出現する雌花軸には長短の違いはあれど、全て新枝(普通葉を伴わないものもある)から複数本が立ち上がっていました。ところが、このウラジロガシから出現した雌花軸は、冬芽から新枝を通さずに単体で立ち上がっていました。しかも、現在我々が目にする雌花軸とは全く異なり、単果形態の雌花序は皆無で、20個前後の多果形態(両性花序を含む3果)のもので埋めつくされていました。

 私は、独自のフィールド調査で取得した様々な物証を基に、ブナ科の樹木が誕生してから現在に至るまでの花序(花軸)の進化過程を考案しましたが、この展示品はその根拠となる極めて重要な物証の一つと言えるでしょう。

(本件に関連のある記事)
・ セクション 8 雑記331 : あのウラジロガシに花が咲きました

・ セクション 8 雑記403 : 9月に咲きました

・ セクション 22 季節外れのドングリの花 6項(ウラジロガシ)

・ セクション 30-1 花序のレイアウト(ステージ2)