31. 年成論

 1つの殻斗の元になる器官に咲いた複数の雌花が結実したもの、即ち1つの殻斗が複数の堅果を包含したドングリをこのHPでは多果ドングリと呼んでいます。ところが、外観上は多果ドングリとそっくりなのに、実は複数の殻斗が合着して1つの殻斗を形成することで、あたかも1つの殻斗が複数の堅果を包含したような形態のドングリが実は存在するのです。そこで、そのようなドングリをあらたに “ 擬似多果ドングリ ” と命名し、多果ドングリとは異なるものとして取扱うことにします。

 このセクションでは、マテバシイ属とコナラ属における擬似多果ドングリの事例を詳解します。これをご覧になれば、異なる殻斗同士が合着するという事象が、ドングリの世界では極めて稀にしか起こらないものであることがご理解いただけると思います。

 ところで、このHPを初めてご覧になられた方は、『複数の殻斗が合着して1つの殻斗を形成するのは、マテバシイ属のドングリでは当たり前の事ではないか』 と思われるかもしれません。それは、マテバシイ属の花序が、一般に複数の雌花序が花軸の特定箇所に集結したものであると考えられているからだと思いますが、私はこの解釈に疑念を抱いております。

 私はドングリ一筋20年以上、ひたすらブナ科の植物における花序形態について様々な角度から観察を続けて参りましたが、マテバシイ属における上述の一般的な解釈を支持するような物的証拠には、これまで一度もお目にかかったことがありません。逆に、その解釈がマテバシイ属における花序の実態にそぐわず、コナラ属と全く同じものであることを示す事例なら、数えきれないぐらい目撃してきました。

 ただ、私はこの分野の専門家ではありませんので、自身の理解不足によって観察結果を誤って解釈している可能性は否定できません。そんなわけで、もしマテバシイ属の花序に関する一般的な解釈の基になる物的証拠についてご存知の方がおられましたら、ぜひともご教授くださいますようお願い申し上げます。もっとも、そんなものが存在すればの話ですが...。
(注) このセクションに掲載している写真については、一切の転載を許可しておりません。
32-1. マテバシイ属
32-2. コナラ属
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