ウラジロガシQuercus salicina )
 花期

 一般に、ウラジロガシは5〜6月に開花します(図22-7-1参照)。ところが、5〜6月に開花した後、9〜12月に再び開花する個体があります(図22-7-2〜図22-7-3参照)。同じコナラ属でも、コナラ亜属ではこういう個体にしばしば遭遇しますが、アカガシ亜属については今のところ1体でしか目にしたことがありません。

 
 5〜6月の開花は、ほとんどの新枝に見られます(図22-7-4参照)。一方、9〜12月の開花は、ほとんどが樹上の高所にある僅かな新枝に現れるので、注意深く観察しないと開花していることに気づきません(図22-7-5参照)。


 花序形態
 5〜6月の花は、雄花軸と雌花軸が明確に区別出来ます(図22-7-6参照)。雄花軸は新枝の下方に垂下する長さ60〜100mm程度の尾状花序です。一方、雌花軸は新枝の上方の葉腋に立つ長さが10〜20mm程度の穂状花序で、そこに1本当り1〜8個の雌花が咲きます。

 一方、9〜12月に咲く花は、5〜6月に咲くものとは全く形態が異なります(図22-7-7〜図22-7-9参照)。5〜6月に出現した枝の頂芽から出現した普通葉を伴わない新枝に、穂状の雌花軸が1本だけ立ちます。また、それ以外の冬芽(頂芽、側芽)からは、普通葉を伴わない新枝に穂状の雄花軸が1〜3本立ちます。

 9〜12月に咲く雄花軸は、5〜6月のものに比べて花軸がやや太く短めで、穂状に立ちます。そこには雄花だけでなく、雄花に雌蕊がある両性花もたくさん見られます。

 また、9〜12月に咲く雌花軸は5〜6月のものに比べてやや長めで、25〜30mmのものが1本だけ穂状に立ち、そこに数10個の雌花が咲きます。それらのほとんどは多果 [ 3果が主 ] と両性花です。


 果期
 9〜12月に開花したウラジロガシを目撃したのは、これまでにこのウラジロガシが唯一です。この個体で9〜12月に開花を伴って出現した新枝は、ほとんどが雄花軸だけで構成されており、雌花軸を伴なったものはごく僅かでした。それらは、開花後2ヶ月前後で果軸ごと脱落してしまいました。