ツブラジイCastanopsis cuspidata )
 花期

 普通ツブラジイは5〜6月に開花しますが、5〜6月に開花した後、9〜12月に再び開花する個体が少なからず存在します(図22-6-1参照)。

 9〜12月の開花の様子は個体によって異なりますが、樹全体でごく僅かしか開花しなかったり、雄花が完全に開花しないものが多いことから、注意深く観察しないと開花していることに気づきません(図22-6-2参照)。

 ただ、9〜12月にも4〜5月と同じぐらい大量に花を咲かせる個体もありますが、ほとんどが雌花軸で雄花軸はごく僅かしか咲きません。図22-6-3はそういう個体の例です。図中の春咲で垂下していのは雄花軸ですが、秋咲で垂下しているのは長さが20cm前後もある雌花軸です。

 花序形態
 9〜12月に咲く花は、5〜6月に咲くものと外観上は基本的に同じで、5〜6月の開花した後に形成された頂芽から8月以降に出現した新枝に開花します。スダジイと同様に、新枝ごとに雄花軸だけが立つものや雌花軸だけが立つものも数多く見られます。

 果期
 ツブラジイは2年成なので、5〜6月に咲いた花は翌年の11月頃に結実します。マテバシイの場合、同じ個体で5〜6月に咲いた花と9〜11月に咲いた花が結実する時期を比較すると、後者には約半月〜1ヶ月程度の遅れが生じますが、ツブラジイの場合はスダジイと同様にほぼ同時期に結実します。図22-6-4は、図22-6-3の個体に結実したドングリの例です。

 スダジイと同様に、9〜12月に咲く花は5〜6月に咲く花に比べて不稔のものが目立ちます。結実しても、せいぜい数10本の果軸に1個程度の割合です。この傾向は、私がこれまでに目撃した全ての個体で共通しています。

 果実形態
 10月頃に咲いた花が結実したドングリの重量を測定すると、同じ個体で5月に咲いた花が結実したものとほとんど変わりません。また、これらのサイズや形状についても顕著な差は認められません。図22-6-5は、図22-6-3の個体に結実したドングリの例です。