スダジイ( Castanopsis sieboldii )
◎ 花期
普通スダジイは5〜6月に開花しますが、5〜6月に開花した後、9〜12月に再び開花する個体が少なからず存在します(図22-5-1参照)。
スダジイについては、マテバシイのように厳密な調査を行っていませんが、京阪神の随所で目撃した開花状況から推測すると、おそらくマテバシイと同じぐらいの割合の個体が、9〜12月にも開花していると思われます。
9〜12月の開花の様子は個体によって異なりますが、樹頂付近に集中している場合が多いので、注意深く観察しないと開花していることに気づきません。
◎ 花序形態
9〜12月に咲く花は、5〜6月に咲くものと外観上は基本的に同じで、5〜6月の開花した後に形成された頂芽から8月以降に出現した新枝に開花します。普通葉を伴わない新枝に、雄花軸だけが立つものや雌花軸だけが立つものも数多く見られます(図22-5-3、図22-5-4参照)。
◎ 果期
スダジイは二年成なので、5〜6月に咲いた花は翌年の9〜12月に結実します。マテバシイの場合、同じ個体で5〜6月に咲いた花と9〜12月に咲いた花が結実する時期を比較すると、後者には約半月〜1ヶ月程度の遅れが生じますが、スダジイの場合はほぼ同時期に結実します。
スダジイでは、5〜6月に咲く花に比べて9〜12月に咲く花は不稔のものが目立ちます(図22-5-5参照)。数10本の果軸に対して、せいぜい1個ぐらいしか結実しません(図22-5-6参照)。この傾向は、これまで私が目撃した全ての個体に共通しています。
◎ 果実形態
9月に咲いた花が結実したドングリの断面を見ると、内部にはちゃんと種子が形成されています。同じ個体で採集した5月に咲いた花が結実したドングリに比べ、サイズや形状に顕著な差異は認められません(図22-5-7参照)。