マテバシイLithocarpus edulis )
 花期

 普通マテバシイは5〜6月に開花します。ところが、5〜6月に開花した後、9〜12月に再び開花する個体が少なからず存在します(図22-1-1参照)。
 特定の地域で同じような環境下に植栽された400体余りを対象に調査した結果、全体の3%以上の個体が9〜12月に開花するのを確認しました。また、9月以降に毎年コンスタントに開花するもの以外に、普通の個体でも突発的に開花することがあります。これは、マテバシイが年に複数回開花する能力を種として潜在的に保持していることの証と考えられます。

 9〜12月の開花の様子は個体によって異なりますが、樹頂付近に集中している場合が多いので、注意深く観察しないと開花していることに気づきません(図22-1-2参照)。

 9〜12月に開花を確認した個体数は、これまでに兵庫県と大阪府で200体を上回ります(2019年12月現在)。

 花序形態

 9〜12月に咲く花は、5〜6月にかけて咲くものと外観上は全く同じで、5〜6月に開花した後に形成された頂芽から9月以降に1回、もしくは2〜3回開花します(図22-1-4参照)。また、9月以降に現れる花序には、コナラ属やシイ属のように、普通葉を伴わない新枝に花軸(果軸)だけが立つものも稀に見られます(図22-1-5参照)。


 果期

 マテバシイは2年成なので、5〜6月に咲いた花は翌年の9〜11月に結実します。同じ個体で5〜6月に咲いた花と9〜12月に咲いた花が結実する時期を比較すると、後者には約半月〜1ヶ月程度の遅れが生じます。

 果実形態

 ドングリの形態を比較すると、花期の違いで顕著な差は認められません(図22-1-7参照)。但し、個体によっては9〜12月に咲いた花の方が、結実した堅果の胴回りの直径がやや大きいケースも見られます(図22-1-8参照)。