3. 大きさの異なる堅果

 2果を構成する2個の堅果には、極端に大きさが異なるものがあります。その要因として、2果の雌花序を構成する2つの雌花のサイズの違いが考えられます(図3-1-4-8参照)。
 2果の雌花序を構成する2つの雌花は、ほとんどの場合サイズは同程度ですが、中には極端に大きさが異なるものも存在します。このような雌花序が結実すると、2個の堅果の大きさに顕著な違いが現れます。

 それ以外の要因として、雌花の雌蕊(子房)を構成する心皮の数が考えられます(図3-1-4-9参照)。ブナ科の植物の雌蕊は複数の心皮から成る複合雌蕊が一般的ですが、多果の雌花序ではしばしば1枚の心皮から成る単一雌蕊が発現します。
 私が調べたところ、ブナ科の単一雌蕊は胚珠を包含しないので、開花後2〜3ヶ月で単一雌蕊の雌花だけ成長が停止します。それゆえ、単一雌蕊の雌花は多果を構成する一部の矮小な堅果としてのみ、その姿形を残すことが出来ます。

 また、複合雌蕊でも心皮の数によって堅果の大きさに差が現れます。図3-1-4-10は、雌蕊を構成する心皮の数と幼果のサイズ [ =代表値として幼果の横幅を選定 ] の関係を表しています。心皮の数が少ないもの、特に2枚については典型的な3枚に比べてサイズがやや小さくなります。逆に、6枚以上になるとかなり大きくなります(*)

 以上の3つの要因以外にも、多果を構成する各々の幼果が成長する過程で、成長に必要な養分のパス(維管束)を各々の雌花に対してどのように分配されるかによっても、結実した堅果の大きさに違いが生じることが予想されます。
* セクション8の雑記128を参照願います。