3-2-3-8. 殻斗の形状 その4

 一般に、ドングリの殻斗はそこに包含する堅果のサイズに同調しながら成長します。ところが、稀に殻斗の成長が堅果に対して極端に先行することがあります。セクション3-2-3-7で紹介したのは、殻斗が横方向(径方向)に異常成長した場合に殻斗の表面にうねりが生じる事例ですが、縦方向に異常成長した場合は、殻斗の裾の一部(もしくは全て)が殻斗の内側に巻き込まれることがあります。図3-2-3-8-1は、アベマキの殻斗の裾の鱗片が内側に侵入した事例です。

 図3-2-3-8-2は、図3-2-3-8-1の殻斗に包含された堅果ですが、鱗片が殻斗の内側に侵入したことによって形が大きく歪んでいます。

 ところで、鱗片が殻斗の内側に回り込む現象は、様々な種類のコナラ属のドングリに見られます。因みに、図3-2-3-8-3はシラカシのドングリの殻斗の鱗片が内側に侵入した例ですが、鱗片が侵入してもそこに包含された堅果に顕著な変形は認められません。アカガシ亜属のドングリについては、薄くて柔軟性のある殻斗が多いので、鱗片の侵入は堅果の形態に影響を及ぼさないのかもしれません。


[ 関連記述 ]

・ セクション6-1 “ 大泉緑地の奇妙なドングリ その1 ”
・ セクション6-3 “ 大泉緑地の奇妙なドングリ その3 ”
・ セクション8 “ 雑記109: アカガシ亜属にもありました ”
・ セクション8 “ 雑記146: 偶然の産物なのか? ”
・ セクション8 “ 雑記166: 異様な殻斗をもつシラカシの幼果 ”
・ セクション8 “ 雑記179: 殻斗の内側に鱗片が侵入する理由 ”
・ セクション8 “ 雑記366: 毒々しい模様の堅果に異形の殻斗 ”