3-2-3-7. 殻斗の形状 その3

 通常、殻斗は堅果にジャストフィットしています。ところが、堅果にフィットしないで、全体が波打つような形をした殻斗に出会うことがあります(図3-2-3-7-1参照)。

 一般に、ドングリの殻斗は包含する堅果のサイズに同調しながら成長します。ところが、稀に殻斗の成長が堅果に対して極端に先行することがあります。とりわけ、殻斗が横方向(径方向)に異常成長した場合、殻斗の内径が堅果の外径よりも大きくなるので、殻斗の内壁に堅果と接触しない空洞が所々に生じます。その部分の殻斗が外側に隆起したせいで、殻斗の表面に波打つようなうねりが生じるのです。但し、幼果の段階で殻斗が波打っていても、その後の堅果の成長次第で、最終的に結実した殻斗の形態には大きな違いが現れます。
 図3-2-3-7-2は、幼果の段階で殻斗にうねりが認められた2つの個体(個体A、個体B)の果実の成長過程を表わしたものです。個体Aでは、当初見られた殻斗のうねりが堅果の成長につれてほとんど目立たなくなりました。一方、個体Bでは、堅果の成長が殻斗の成長に最後まで追いつかなかったせいで、殻斗のうねりは解消されませんでした。
 
 図3-2-3-7-1のドングリは個体Bのケースに該当しますが、図3-2-3-7-2の個体Bのものと同様に、大きく変形するのは殻斗だけで、これらの殻斗が包含する堅果には目立った変形は認められません。


[ 関連記述 ]

・ セクション8 “ 雑記166: 異様な殻斗をもつシラカシの幼果 ”
・ セクション8 “ 雑記179: 殻斗の内側に鱗片が侵入する理由 ”
・ セクション8 “ 雑記201: これでもシラカシのドングリなの? ”
・ セクション8 “ 雑記224: 殻斗に変化が現れるのはいつ? ”
・ セクション8 “ 雑記226: 昨年は波打ってなかったのに... ”
・ セクション8 “ 雑記234: 殻斗の波が消えました ”
・ セクション8 “ 雑記451: な〜んちゃって、パキロマ! ”