3-2-3-1. 多種子の同時発現

 典型的なコナラ属の雌花の子房は3枚の心皮で構成されており、それぞれが2つずつ計6つの胚珠を包含します。普通は、この中の1つの胚珠だけが成長して、1つの堅果に1つの種子が入ったドングリになりますが、稀に2つ以上の胚珠が同時に成長して、1つの堅果の中に複数の種子が入ったドングリが誕生します。

 図3-2-3-1-1は、複数の種子を包含したウバメガシの堅果の断面です。ドングリの種類によらず、1つの堅果が2つの種子を包含したものはよく見かけますが、3つ以上の種子を包含したものにはなかなかお目にかかれません。

 本来、堅果を包む果皮は1つの種子を収納する構造になっているので、そこに2つ以上の種子を無理矢理収納しようとすると、堅果は部分的に膨れて歪な形状になります(図3-2-3-1-2参照)。さらに、膨張する種子の内圧に耐えきれなくなると果皮が割裂して、内部の種子が果皮の外側に露出してしまうこともあります(図3-2-3-1-3参照)。


[ 関連記述 ]

・ セクション6-3 “ 大泉緑地の奇妙なドングリ その2 ”
・ セクション8 “ 雑記 B: 落下する前に割れているドングリ ”
・ セクション8 “ 雑記018: ドングリの種皮ってどの部分なの? ”
・ セクション8 “ 雑記038: 4つ子のドングリ発見! ”
・ セクション8 “ 雑記324: 多種子が半端ない! ”