アベマキ(Quercus variabilis)
【 変形要因 】 多果の発現 (セクション3-2-1参照)

 図3-2-2-9-1は、アベマキの変形ドングリ “ 変形くん ” です。アベマキも他の樹種と同様に多果を発現しますが、極めて稀にしか多果ドングリを結実しません。


【 変形要因 】 果実の密集  (セクション3-2-3-3参照)

 アベマキやクヌギの花軸には、普通雌花が1つ乃至2つ咲きますが、稀に3つ咲くことがあります(図3-2-2-9-2参照)。

 アベマキの果軸は長さが10mmに満たない短いものなので、そこに咲いた3つの雌花が全て結実すると、隣接するドングリ同士が激しく干渉するため、互いに圧し潰されたような形になることがあります(図3-2-2-9-3参照)。


【 変形要因 】 殻斗の元になる器官の分裂 (セクション3-2-3-6参照)

 図3-2-2-9-4はアベマキの殻斗ですが、赤い矢印で表示した箇所だけ殻斗が大きく窪んでいます。アベマキの殻斗にこのような分裂した痕跡が認められることはとても珍しいのですが、殻斗がこれだけ歪んでいても、そこに包含された堅果に顕著な変形は認められません(同図下段参照)。


【 変形要因 】 殻斗の内側への鱗片の侵入 (セクション3-2-3-8参照)

 図3-2-2-9-5は、鱗片が殻斗の内側に侵入したアベマキのドングリです。左側の殻斗は、離層の痕跡(へそとの接続部分)を除く内壁が全て鱗片に覆われていますが、右側の殻斗には内側に鱗片が侵入していない箇所が見られます。ただ、いずれにせよ殻斗の内側に鱗片が侵入すると、そこに包含された堅果は著しく変形します(同図下段参照)。