イチイガシ(Quercus gilva)
【 変形要因 】 多果の発現 (セクション3-2-1参照)

 図3-2-2-8-1は、イチイガシの変形ドングリ “ 変形くん ” です。多果の発現は樹種を問わず広く見られますが、私の経験から言うと、イチイガシは他の樹種に比べて発現率そのものがかなり低いように思われます。この図は、2012年に明石公園 [ 所在地 : 兵庫県明石市 ] の特定の個体から採集したものですが、珍しいことに、その年に限って結実したほとんどのドングリに大なり小なり多果が発現した痕跡が認められました。

 
 多果が発現しにくいということは、当然の事ながら、多果ドングリに遭遇する機会が著しく乏しいことを意味します。そんなわけで、パッと見明確に多果と判別できるイチイガシのドングリには一度も遭遇したことがありませんが、明確に多果と判別しにくい紐状の不完全な堅果が2つある3果の幼果なら、採集したことがあります(図3-2-2-8-2参照)。


【 変形要因 】 殻斗の異常成長 (セクション3-2-3-6参照)

 長居植物園 [ 所在地 : 大阪府大阪市 ] のイチイガシの中に、殻斗が異様に変形したドングリを大量に結実する個体があります(図3-2-2-8-3参照)。これらの殻斗には、1箇所、乃至2〜3箇所に亀裂を修復したような痕が見られます。たぶん、雌花序の殻斗の元になる器官のこの部分が分裂していたのではないでしょうか。