3-1-1. 多果の形態の特徴

 コナラ属の多果は、大きく分けて以下の3つの形態に分類できます(図3-1-1-1参照)。
    タイプT. 1つの殻斗が、複数の堅果を分けて包含する (堅果分離型殻斗)
    タイプU. 1つの殻斗が、分離した複数の堅果をまとめて包含する (堅果統合型殻斗)
    タイプV. 1つの殻斗が、合着した複数の堅果をまとめて包含する (堅果統合型殻斗)


 図3-1-1-1の3つのタイプの中で、タイプVを例に挙げて多果の特徴を以下にまとめます。

タイプVの2果の堅果の特徴

 図3-1-1-2は、ツクバネガシの特定の個体から採集したタイプVの堅果です。どれも2個の堅果がへその一端で重なるように繋がっており、大きい方が小さい方の堅果に寄り添うようにして弓形に曲がっています。

 さらに、図3-1-1-3は図3-1-1-2の左端の堅果を拡大したものです。これを見ると、大きい方の堅果の表面が2つの堅果が合着した箇所から首に至るまでケロイド状に変質しています。この変質は、図3-1-1-2の全ての2果で大なり小なり見られます。

タイプVの2果の殻斗の特徴
 図3-1-1-4は、図3-1-1-2の右端の2果の殻斗を内側から見たところです。殻斗と堅果が維管束を通して繋がっていた部分には、この殻斗が包含していた堅果の数だけ離層の痕跡が見られます。また、2個の堅果がへその一端で重なるように繋がっていたことがこの痕跡からも窺えます。