14. 4本以上の花柱をもつドングリ

 このセクションでは、花柱の数とその幼果の内部構造(子室、胚珠)の関係について調査した結果を報告します。
 花柱は、雌花の子房(雌蕊)の先にあって花粉の授受を媒介する部位で、一般的に雌蕊を構成している心皮(*)の数に対応すると考えられています。ですから、花柱が3本あるということは、雌蕊が3枚の心皮から構成されていることになるので、子房の内部には3つの子室とその倍の6つの胚珠が存在することになります。

 そこで、実際に花柱の数が異なるシラカシの幼果を胴回りで切断して、それぞれの内部にある子室と胚珠を観察してみました。
 * 心皮とは、雌蕊を構成する要素で胚珠をつけた葉 [ 大胞葉 ] のことである。ブナ科の植物は、1枚の心皮で1つの子室を形成し、その内部に2つの胚珠を包含する。

 図14-2-1は、開花後1ヶ月(図中:6月25日)〜2.5ヶ月(図中:8月10日)の期間における、シラカシの幼果の切断面です。これを見ると、子室や胚珠の状態が実体顕微鏡レベルで明瞭に観察出来るのは、開花後1.5〜2ヶ月ぐらいの極めて短い期間に限定されるのが判ります。

 そこでこの期間内に、2〜5本の花柱をもつ幼果を採取(花柱が2本のものを20個、それ以外の本数のものは50個前後)して、それらの切断面を観察したところ、それぞれ8割以上
(**)で花柱と心皮の数が対応することが明らかになりました(図14-2-2参照)。
** それ以外のものは花柱がスプリットしたり合着しているため、心皮との対応関係が取れなかったと思われます。

 セクション14-1と14-2の結果から、クリ属を除くドングリには一般的に2〜5本の花柱があり、それぞれの子房(雌蕊)は2〜5枚の心皮で構成されていることが明らかになりました。

 余計なお世話かもしれませんが、文献に見られる、“ ドングリには3本の花柱がある ” という実態とはかけ離れたステレオタイプな表記は修正が必要ではないかと個人的には思っています。