14. 4本以上の花柱をもつドングリ

 まずは、コナラ属のシラカシを例にとって、花柱の数の実態を調査しました。

 調査方法については、シラカシが数多く植栽されている深田公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] と掖谷公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] で各10体を選出し、個体ごとに無作為に3本の果軸を採集し、そこに着果した幼果の花柱の数を集計しました(表14-1-1参照)。

 この表をみると、20体の内15体から採集した幼果の平均的な花柱の数は3本で、それ以外の数のものは全体から見ると少数派でしたが、残りの5体については少数派と思われた4本の花柱を有するものが、半数以上を占めていました。


 但し、コナラ属のドングリの花柱は平板なので、各々の花柱がスプリットしていても外観からは判別が難しく、実際のところ花柱が何本あるか判りにくい場合も多々あります。そこで次に、円筒型の花柱をもつマテバシイ属のシリブカガシについて同様に調査しました。円筒形の花柱であれば、スプリットしたら明らかに円筒形ではなくなるので、花柱の数を正確に把握できると考えたからです。

 調査に当たっては、京阪神の随所に植栽された9体を選出し、個体ごとに無作為に花軸を2〜3本採取して、そこに咲いた雌花の花柱の数を集計しました(表14-1-2参照)。

 この表を見ると、4本以上の花柱をもつ雌花は、シラカシと同様に特定の個体に集中していることが判りました。しかも、4本以上の花柱は、いずれもほぼ同じサイズの円筒形であったことから、この表の数値は実際の花柱の本数を表わしていると考えて間違いないでしょう。
 
 因みに、表中の樹木個体番号2の花軸を図14-1-3に示しますが、これを見ると3本の花柱をもつものが標準形態とはとても思えない状況です。


 ここまで、4〜5本の花柱をもつドングリについて紹介してきましたが、ドングリの種類を問わず2本の花柱をもつものも存在します(図14-1-4参照)。花柱の数ごとにドングリが存在する割合を不等号を使って表現してみると、大体以下の様な関係になると思います。

3本 > 4本 > 5本 >> 2本

 不等号1つで、数のオーダーが1桁違うと解釈して頂ければ結構です。5本と2本の間に不等号を2つ挿入していますが、それだけ2本の花柱をもつものは数が少ないということを表しています。因みに、これはあくまで観察者である私自身の経験的、感覚的なものであることを留意願います。

 ところが、そんな希少な2本の花柱をもつドングリが、しばしば大量に発生するケースがあります。実は、多果を構成する雌花(堅果含む)の中には標準的な3本の花柱をもつものといっしょに、2本の花柱をもつものが数多く混在しています(図14-1-5参照)。


 以上の結果から、3本の花柱をもつドングリが標準的な形態であることに間違いはありませんが、種類を問わずそれ以外の数の花柱をもつものも相当な割合で存在することが明らかになりました。