16-2. 殻斗の内側への鱗片の回り込み

 ドングリの種類によって、殻斗の鱗片の形態は様々です。通常、鱗片は殻斗の外側だけを覆っていますが、コナラ属のドングリの中には、極めて稀に、殻斗の外側の裾部分から回り込むようにして、鱗片が内側に侵入している個体が存在します。これらの殻斗については、セクション3-3-4 “ ちょっと変わった帽子達” に幾つかの実例を紹介していますが、そのセクションをまとめている段階では、鱗片が殻斗の内側に侵入することが、ドングリにとってどのようなメリットがあるのか全く理解していませんでした。

 ところが、今回、ドングリの虫害対策という観点からあらためて考えてみると、この特異な構造は、へその周りの柔らかい果皮を包み込んでいる殻斗の肉厚が実効的に厚くなっており、妨害効果が極めて高いものであることが判りました。殻斗の内側に鱗片が侵入することによって、堅果が歪な形に変形してしまうというデメリットはありますが、昆虫による産卵を抑制出来る点では、非常に優れた構造だと思います。

 但し、鱗片が殻斗の内側に回り込むことによって、明らかに殻斗が肉厚になっているのは、アベマキやクヌギのような鱗片をもつもの(図16-2-1参照)に限定されており、その他の種類のもの(図16-2-2参照)については、裾から僅か数mm程度しか鱗片が回り込んでいないので、どの程度の妨害効果があるのか定かではありません。シギゾウムシの様な昆虫が産卵する場所として最も多いのが、殻斗の厚みが最も薄くなる裾の辺り(図16-2-2:赤丸で囲んだ部分)なので、この部分を補強するだけでも、多少は妨害効果があるのかもしれませんが....。

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