3-3-8. 鱗片が萎縮したクヌギの殻斗

 クヌギの殻斗と言えば、フサフサした長い鱗片で覆われているのが普通ですが、たまに鱗片が萎縮してコナラの殻斗みたいな形をしたものを目にすることがあります(図3-3-8-1参照)。

 外観からは、黒く変色して腐蝕しているようにも見えますが、他の殻斗と同じようにちゃんと成熟した堅果を自然落下するので、見た目は悪くても殻斗としては正常に機能しているようです。

 この殻斗の表面を実体顕微鏡で拡大してみると、鱗片の先端が黒く変色しており、鱗片の大部分が殻斗本体と一体化している様子がよく判ります(図3-3-8-2参照)。

 図3-3-8-1とは異なる個体に結実した類似の殻斗を見てみると、図3-3-8-3(b)の様にフサフサとまではいきませんが、鱗片の大部分が殻斗本体と完全に一体化していない状態のものもありました。

 これらの殻斗が形成される過程については、幼果の段階から観察していないのではっきりした事は判りません。ただ、何らかの原因で幼果の先端部分に閉じ込められていた鱗片が相互に癒着したまま分離されない状態で成育した結果、図3-3-8-1の様な殻斗が誕生したのではないかと考えています。