雑記E. 2010.10.10
“ へその周りにある鱗状の模様 ”

 昨年、久宝寺緑地 [ 所在地 : 大阪府八尾市 ] にあるアベマキで、へその周囲の果皮にまるで魚の鱗のような激しいギザギザがあるドングリをたくさん見つけました。(図8-E-1参照)。クヌギのドングリでも類似の形態のものを何度か目にしてきましたが、結実した全てのドングリにこのような模様がある個体に出会ったのはこれが初めてです。
 さて、このドングリを高さ方向に切断して種子を取り除き、鱗状の果皮の部分がどのようになっているか実体顕微鏡で観察してみました(図8-E-2参照)。その結果、以下の事がわかりました。

1. 鱗状の果皮は、他の部分に比べてやや厚い。

2. 鱗状になっている部分では、果皮を構成している層構造が不規則である。

 たぶん、殻斗と堅果を繋ぐ部分に何らかの欠陥があって果皮の成長速度が不規則になっていることが原因ではないかと思われます。その痕跡を探すために、殻斗の内側の様子も観察してみました(図8-E-3参照)。その結果、殻斗と堅果を繋いでいた離層の痕跡の周囲に、両者の分離不良を思わせる剥片が大量に残存していました。
 ドングリが成熟するまでの間、果皮は堅果のへそに相当する部分から次々に新しい細胞が生まれることで伸長します。このドングリの場合、その部分に何らかの欠陥が生じて果皮を構成する各層の成長速度に変調をきたしたせいで、もしかすると鱗状の模様が出現したのかもしれません。