ケース14. 輪から渦に遷移した殻斗
 図17-1-14-1は、殻斗の鱗片の一部が切れたシラカシの2果のドングリです。因みに、2果であることは殻斗の内側にある離層の痕跡が鱗片の切れた部分まで延伸している様子から判ります。実はこの殻斗、シラカシではあまり見られないある特異な構造を有しているんです。

 普通、アラカシやシラカシの殻斗の鱗片は輪を積み重ねたような構造をしており、ウラジロガシ(*)やオキナワウラジロガシのように鱗片が渦を巻いた構造のものを目にすることはありません。ところが、このドングリの殻斗を見ると、柄に近い部分の鱗片は輪状ですが、そこから先が渦状に遷移しています(図17-1-14-2参照)。

 単果では見られない渦状の殻斗ですが、このように多果が発現した殻斗ではしばしば渦状のものが現れます。
* セクション8の雑記293を参照願います。