ケース1. 堅果を包含しない小殻斗

 図17-1-1-1は、殻斗にもう1つの小さな殻斗がくっついた2果です。(a)はセクション3-1-3で分類した2果のType4に該当します。通常、小さい方の殻斗は、堅果の成長に必要な養分の通り道である維管束を確保する為、殻斗の頂点(果軸との接続箇所)に近いところに形成されます。殻斗の真ん中から花柱が顔を覗かせていることから、小さいながらも堅果を包含した立派な殻斗であり、当然の事ながら維管束も通じています。

 一方、(b)は珍しいことに殻斗の裾の部分に小さな殻斗が形成されています。拡大してみると、殻斗の輪状構造がはっきりと判りますが、堅果は包含していません(図17-1-1-2参照)。
 
 この殻斗から堅果を取り外して内側を見ても、小さな殻斗に維管束が通じていませんでした。もしかすると、分岐した維管束が殻斗の内部を通って直接この小さな殻斗に達しているのかもしれません。

(追記)
 その後の調査で、図17-1-1-1の(b)の小殻斗は、殻斗の内側に立つ果軸に着いた幼果(堅果は退化消滅)であることが判りました。ですから、厳密に言うとこれは単果です。詳細は、セクション8の雑記303を参照願います。