ツブラジイ(Castanopsis cuspidata)
 ツブラジイの多果を採集し始めた当初は、スダジイほど多果を結実しにくいように思われましたが、探索期間が長くなるにつれて、どうやら同じぐらい多果を結実していることが判ってきました。図3-B-6-1はツブラジイの多果ドングリの例で、2つの堅果が隙間なく合着しています。

 ところで、シイ属ではこれまで4果以上の多果を目撃した報告事例がないそうですが、私が調査した結果、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のツブラジイで4果以上の多果(*)の発現を確認しました(図3-B-6-2〜図3-B-6-5参照)。現在までに、4果以上の多果はこれ以外の個体で見つかっていません。
* 図3-B-6-5の7果について、7つの内のいくつかの雌花は殻斗の元になる器官から出現した極端に短い花軸に咲いている可能性があるので、もしかすると純粋な7果ではないかもしれません。

 
 平均的な堅果数が1個の国産のスダジイやツブラジイで探し出すのは容易な事ではありませんが、海外に広く分布するシイ属のように殻斗が包含する平均的な堅果数が1〜3個の樹種であれば、4果以上の多果の発現を確認するのはそれほど難しいことではないように思われます。