ツクバネガシ(Quercus sessilifolia)
 京阪神では、神社等のごく限られた場所にしか植栽されていませんが、これまでに京都御苑 [ 所在地 : 京都府京都市 ] と貴志御霊神社 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] にある複数の個体で多果の結実を確認しています。

 御苑では、2006年〜2008年までの間に4つの個体で多果が結実しました。とりわけ、2007年にはそれらの内の1体で67個もの多果ドングリを確認しました。図3-B-4-1はその採集例です。

 一方、貴志御霊神社でも複数の個体で多果の結実を確認しています。中でも、図3-B-4-2にある紐状殻斗(多果を形成する複数の雌花の一つが退化消滅した結果生じたもの)は、アカガシ亜属の多果形態ではシラカシでしか見られない大変珍しいものです(*)
* コナラ亜属では、ウバメガシとコナラの多果形態で紐状殻斗を目撃したことがあります。因みに、単果形態だとコナラ属の多くの樹種で紐状殻斗を見ることができます。

 このように、個体数が少ない割に多果の結実が頻繁に見られることから、シラカシほどではありませんが、アカガシやウラジロガシと同じぐらい多果を結実しやすい樹種と考えて間違いないでしょう。