アカガシ(Quercus acuta)
 
 京阪神の平地には、あまり植栽されていない樹種です。図3-B-12-1は、数少ない平地に植栽された個体で、開花直後の多果の雌花序と、開花から数ヶ月が経過した多果の幼果を撮影したものです。経験的に、国産のアカガシ亜属の中では、ドングリの形態がよく似たツクバネガシと同様に、アカガシは多果を結実する割合が高いと思われます。

 図3-B-12-2は、特定の個体で同じ幼果を撮影したものですが、右側の写真を撮影してから半月も経たずにこの幼果は枯死しました。アカガシについても、他の樹種と同様に、発現した多果が結実に至ることは稀です。

  図3-B-12-3は、平地に植栽された個体が数10個の多果を結実した年に採集した珍しい事例です。

 
 図3-B-12-3の(A)のドングリは、殻斗の内側にある離層の痕跡から伸びる細長い堅果の横に、先端部に小殻斗を着けた果軸が併存します。これは、シラカシを除くアカガシ亜属のドングリでは極めて珍しい形態です。図3-B-12-4はそのディティールです。


 アカガシの多くは、平地よりも山岳部に見られますが、シーズン中にアカガシの自生する山を探索すると、必ずと言ってもいいぐらい結実した多果を目にします。その数は、多くても1個体当たり2〜3個程度ですが、中には開花後1年以上が経過した幼果を含む多果を数百個レベルで着果した事例もあります。図3-B-12-5は、その個体から採集した多果の一部です。

 この個体で採集した多果には、シラカシでよく目にする堅果分離型殻斗や紐状殻斗の多果は勿論の事、他の樹種では見たことがない堅果と堅果を仕切る殻斗が複雑に交差したり、それらが前方に大きく迫り出した異形の多果も数多く認められました(図3-B-12-6参照)。