イヌブナ(Fagus japonica)
 
 イヌブナのドングリは、1つの殻斗が2個の堅果を包含した形態が一般的ですが、ここで紹介するのは1つの殻斗が6個の堅果を包含したものです(図3-B-16-1参照)。

 この図では堅果が5個しか認められませんが、これは6個の堅果の内の1個が極端に小さくて、殻斗の内側に埋没しているからです。このドングリを違う角度から見ると、堅果が6個包含されている様子が明確に見て取れます(図3-B-16-2参照)。

 ブナの3果のドングリを見つけた時に予想した通り、ブナ属には確かに6果が存在しました。おそらく、1つの殻斗の中に6個の堅果を包含したこの形態は、コナラ属の多果と同様に、ブナ属が誕生した頃にはごく一般的な形態だったのではないでしょうか。