ブナ(Fagus crenata)
 
 ブナのドングリは、1つの殻斗が2個の堅果を包含します。ただ、2個の堅果を包含したものに比べて圧倒的に数は少ないですが、堅果を1個だけ包含したものも併存します(図3-B-15-1参照)。

 ブナのドングリにはこの2つの形態しかないと思っていたのですが、2015年の秋に妙見山 [ 所在地 : 大阪府豊能郡能勢町 ] のブナ林で、1つの殻斗が3個の堅果を包含したドングリを見つけました(図3-B-15-2参照)。

 第3の堅果は、4つに割裂した殻斗片の1つの内側にあり、中央にある2個の堅果の一方と面と面を接する位置にありました。また、通常ブナの殻斗は堅果の稜と接する部分が割裂しますが、第3の堅果の稜が殻斗の内側と接する部分にも小さな亀裂が認められました。その後、森林植物園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] で見つけた3果のドングリ(図3-B-15-3参照)も、基本的な構造は図3-B-15-2と同じでした。

 この第3の堅果の配置から推測すると、ブナの多果の中には1つの殻斗の中に少なくとも6個の堅果を包含したものが存在することが予想されます。