コナラ(Quercus serrata)
 
 国産のコナラ属の中で最も繁栄している樹種ですが、多果を結実することはまずありません。コナラも他の樹種と同様に多果を発現しますが、それらのほとんどは多果を構成する雌花が1つを除いて早期に退化消滅して、変形ドングリ “ 変形くん ” になってしまうからです。
* セクション3-2-1を参照願います。

 例外的に、春に開花してから秋まで断続的に開花を繰り返す特殊な個体では、しばしばハッキリと多果と判別できる雌花や幼果を目にすることがあります(図3-B-10-1参照)。但し、そういう個体でもほとんどの場合、開花後4ヶ月以内の小さな幼果の段階で枯死してしまいます。図3-B-10-2は、枯死する前の多果の幼果の例です。

 滅多に多果を結実しないコナラが、珍しく結実した例を2つ紹介します。いずれも、毎年のようにたくさんの多果の雌花を数多く咲かせる高塚山緑地 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] の個体で採集したものです。

 1つは、殻斗が2つの堅果を分けて包含した堅果分離型殻斗の2果です(図3-B-10-3参照)。瓦状の鱗片をもつ2つの殻斗が合着したように見える姿は、マテバシイのドングリの殻斗と瓜二つです。

 もう1つは、殻斗が2つの堅果をまとめて包含した堅果統合型殻斗の2果です(図3-B-10-4参照)。この堅果は結実してかなり時間が経ってから採集したせいか、果皮に大きな亀裂が入っています(図3-B-10-4参照)。