シラカシ(Quercus myrsinaefolia)
 コナラ属の中で最も多果を発現しやすいのはシラカシです。2005年に初めて多果を目撃して以来、多くの個体でその存在を確認しており、採集した多果ドングリは優に数千個に上ります。

 多果は全ての個体で発現するわけではなく、個体によって発現しやすいものとそうでないものがあります。これまでに京阪神の随所でシラカシの多果を観察してきましたが、とりわけ深田公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] と掖谷公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] は、発現の頻度と形態の多様性の点で刮目に値します。

 

 多果を発現しやすい個体の中には、推定1万個以上の多果の雌花を咲かせるものもありますが、それらのほとんどは開花後数ヶ月内の幼果の段階で枯死してしまいます。個体によって状況はかなり違いますが、1つの個体で多果が無事に結実する割合は、開花した多果の雌花の1/100に満たないのではないかと思われます。

 シラカシは他のコナラ属よりも圧倒的多数の多果を発現し、そしてそれらの多くが結実するせいか、多果の中でも特殊な形態のものが数多く見られます(図3-B-1-4参照)。

 また、大量の多果を発現(万単位の多果の雌花)する個体では、極めて稀に一つの殻斗に4個以上の堅果を包含した高次の多果が見つかることがあります(図3-B-1-5参照)。


(追記)
 図3-B-1-4の中央と右のドングリは、厳密には多果ではありません。後日調査した結果、これらのドングリの殻斗の脇や堅果の表面にある小殻斗については、殻斗から出現した果軸に着果したものであることが明らかになりました。詳細は、セクション8の雑記303を参照願います。