10. ドングリの構造分析

 以前、蜜蜂や蚊を電子顕微鏡で拡大撮影した写真が、雑誌に載っているのを目にした時、それまで私の中にあった昆虫に対する卑小なイメージが一転して、その複雑かつ精緻な構造に驚嘆しました。

 昆虫と同様に、ちっぽけで単純な構造に見えるドングリでも、漠然と目にしているものとは違う世界が見えてくるような気がして、ある時ふと顕微鏡を覗き込んでみました。期待に違わず、そこには肉眼による観察では想像もつかなかったすばらしい世界が拡がっていたのです。

 ドングリはその種類や個体によって微妙な違いはありますが、このセクションではそれらの代表としてシラカシの1個体(図10-1のドングリ)を選出し、その構造のディティールに肉迫してみました。
 使用する顕微鏡は、実物を数10倍程度まで拡大出来る実体顕微鏡と、10万倍程度まで拡大可能な走査型電子顕微鏡です。走査型電子顕微鏡については、検体を真空中で観察しなければならないので、採集後、半年以上経過して十分に乾燥したドングリを使用しました
(*)
 ドングリは乾果に属するので、同じ果実の蜜柑や林檎等に比べると、乾燥させても組織や構造が大きく変化しません
。そういう点から見ると、ドングリは電子顕微鏡による構造観察が、比較的容易な検体と言えるでしょう。

 本セクションにおけるドングリの観察対象部位は、殻斗の外壁(外側部分)、殻斗の内壁(内側部分)、堅果の果皮、花柱、へそ(落痕)の5つの構造物です。
 観察結果は、図10-1にある殻斗と堅果の5つの項目名称 [ 外壁、内壁、果皮、花柱、へそ ] をクリックすることによって詳細を御覧になれます。他種のドングリの構造のディティールについては、個々の特徴的な部位を選定して、別途セクションを設けて紹介します。


図10-1. ドングリの構造分析に使用したシラカシのドングリ

* 生体観察が可能な電子顕微鏡もありますが、私が使用している設備では無理なので、水分を含んだ構造物(種子等)は、観察対象から除外します。
(注1) 本セクションにおける図の見方について
・ カラー写真は実体顕微鏡、モノクロ写真は電子顕微鏡で各々撮影しています。
・ 写真のある部分を拡大する場合、その部分を囲んだ枠の色と同色の枠で拡大写真を表示しています。
・ 電子顕微鏡写真の左下にある数字は拡大倍率です。例として、実物を50倍に拡大した場合は、“ ×50 ” のように表示しています。
・ 電子顕微鏡写真の右下にある数字は10分割した目盛の長さを表しています。
(注2) データ等の無断転載はご遠慮下さい。