9-1-1. 堅果に寄生するタマバチの仲間

◎ ドングリの種類
 これまでに、堅果に寄生するタマバチの幼虫を確認したのは、クヌギ、アラカシ、ウバメガシ、オキナワウラジロガシの4種類です。

◎ 虫瘤の形態

 タマバチが堅果に産卵すると、孵化した幼虫が種皮と種子の境界付近に虫瘤を形成するので、堅果の表面にはこの虫瘤の形状を踏襲したような不規則な凹凸が現れます(図9-1-1-1参照)。また、へそに近い部分に虫瘤が形成されると、表面の凹凸に加えて、堅果全体に捩れが生じる場合があります。

 このタマバチの幼虫は、果皮(もしくは種皮)からドングリの成長に必要な養分の一部を摂取して成長すると考えられます。ですから、この幼虫が寄生しても、種子の成長が阻害されることはありません。

 虫瘤は、卵をやや平らにつぶしたような形をしており、剃刀やカッターでは歯がたたないぐらい堅牢です。虫瘤の長軸は1.5〜3.5mmぐらいですが、これはドングリの種類によって異なり、大きな種類の堅果ほど内部に形成される虫瘤も大きなものになります。4つの種類のドングリについて、虫瘤のサイズを順に並べてみると、だいたいオキナワウラジロガシ、クヌギ、ウバメガシ、アラカシの順に小さくなってます。また、幼虫の形態については、アラカシのものが他のものに比べてやや小さめである点を除くと、ドングリの種類が違っても形態に顕著な差は認められません。

 1個の堅果に、だいたい10〜20個の虫瘤が形成されます。虫瘤は単体の場合もありますが、ほとんどは複数個がくっついた状態で存在します(図9-1-1-3参照)。また、くっついた状態の塊が堅果の内部の2〜3箇所に分散していることもあります。

◎ 成虫

 堅果に寄生するタマバチは、産卵した翌年の夏に羽化します。羽化の時期が確認できているのは、クヌギ、アラカシ、ウバメガシに寄生する3種類です。クヌギとウバメガシに寄生するものは7月下旬〜8月上旬、そしてアラカシに寄生するものは8月下旬〜9月上旬に羽化のピークをむかえます。体長は2〜3mmぐらいで、私の目にはドングリの種類が違っても、どれも同じ姿をした成虫にしか見えません。

◎ 産卵
 これまでに、産卵する様子を確認したのはアラカシだけです(図9-1-1-5参照)。私以外に目撃した方の話も考慮すると、産卵時期は9月中旬〜下旬頃です。アラカシの堅果に寄生するタマバチの羽化のピークが8月下旬〜9月上旬であることから、羽化後一ヶ月も経たないうちに産卵しているみたいです。

 産卵する部位は、殻斗と堅果の境目辺りです。図9-1-1-6では、堅果が殻斗から露出した部分のすぐ上の殻斗の表面に産卵管を立てています。私が目撃した時には、この状態で1時間以上微動だにしませんでした。

 図9-1-7は、産卵後1.5ヶ月が経過した堅果を撮影したものですが、すでに堅果の内部には堅牢な虫瘤が形成されていました。


◎ 補記
 クヌギの堅果に形成された虫瘤は、これまでに相当数の個体で確認してきましたが、クヌギとよく似たアベマキの堅果については皆無です。その理由として、アベマキはクヌギよりも結実時期が早いことと、アベマキの殻斗がクヌギよりもかなり肉厚で奥行があることが考えられます。
 タマバチは、できるだけ果皮が柔らかいへそに近い部分を狙って産卵管を立てます。ところが、タマバチが羽化する8月頃には、既にアベマキは成熟体と同等の強固な殻斗で堅果を覆っているので、へその周辺の果皮にタマバチが産卵するのはまず無理でしょう。