雑記097. 2012.10. 3
“ 二つの堅果に挟まれた奇妙な物体 ”
国産のブナ科の樹木の中で、シラカシは他の樹種とは比較にならないぐらい大量に多果を発現する傾向があります。個体によっては、1シーズンに数千〜数万個もの多果(幼果の段階でほとんどが枯死する)を発現します。幸運にも、自宅周辺には多果を大量に発現する個体が幾つかあり、多果の生態を調べるのにとても助かっています。
今回、掖谷公園 [ 所在地:兵庫県神戸市 ] にある多果を大量に発現するシラカシ(*)で、これまでに見たことがない奇妙な幼果を発見しました(図8-97-2、図8-97-3参照)。見た目は2果ですが、2個の堅果の間から何やら奇妙な物体が顔を覗かせていたのです。
* この個体は、セクション15-2の表15-2にあるシラカシDに該当します。
この物体は殻斗と質感がそっくりなので、たぶん殻斗なのでしょう。最初に目撃した9月11日から、約3週間が経過した10月2日に見ても形がほとんど変わっていなかったので、現在目にしている姿形がこの物体の最終的な形態だと思われます。
殻斗の裾の辺りに、もう1つの小さな殻斗が合着している例(**)であれば、これまでに何度も目撃したことがあります。でも、堅果と堅果の間に小さな殻斗のようなものがあるのは、これが初めてです。
残念ながら、これ以外に同じ形態のドングリが見当たらないので、現段階ではこの奇妙な物体についてはっきりした事は何も判っていません。引き続き、他の個体でも類似するものがないか詳しく調べてみます。
** セクション17 “ 異形多果ドングリの世界 ” を参照願います。
(追記)
その後の調査の結果、この異物が殻斗から出現した果軸の先端に着いた幼果(堅果を包含しない殻斗)であることが明らかになりました。詳細は、雑記303を参照願います。