雑記086. 2012. 8. 7
“ 6果のドングリ 再び ”
 昨年の夏、兵庫県三田市の深田公園で、奇跡的にシラカシの6果のドングリ(*)に巡り会うことが出来ました。以来、2度とこのような好機は無いであろうと思っていたのですが、先月末、自宅からバイクで15分程度の兵庫県神戸市藤原台にある街路樹(シラカシ)を探索していた時に、再び6果のドングリが私の目の前に姿を現したのです(図8-86-1参照)。

 今回遭遇したものは、ぱっと見には3果のドングリの殻斗が2つ繋がっているようにしか見えませんでした。ところが、接近してよ〜く見てみると、2つの殻斗は完全に合着しており、両方の殻斗の根元部分が枝と一箇所だけで繋がっていました。
 そもそも、コナラ属のドングリにおいて隣接する殻斗同士は合着
(**)しないので、これは紛れも無く6果のドングリの一つの形態(*)と見做して間違いないでしょう。
  * 詳細は、セクション15を参照願います。
** マテバシイ属のドングリでは、隣接する殻斗同士が合着した形態が一般的です。

 深田公園で6果のドングリを見つけたシラカシと同様に、樹上はたくさんの多果のドングリで埋め尽くされており、単果と同程度か、あるいはそれを上回る数量の多果が結実しているように見えました(図8-86-3参照)。

 成長途中の6果のドングリなんて、これから先二度と目にすることは無いと思ったので、当分の間はこのままの状態で観察を続けることにしました。ところが、残念な事に発見から2週間が経過した8月4日に目撃したのを最後に、このドングリの行方が判らなくなってしまいました。
 6果のドングリが結実していた枝には、自然に脱落した痕跡が残されていたので、恐らく樹下を覆っているツツジの藪(図8-86-2参照)の中に落下したのだと思います。雑草が生い茂っている程度なら、それらを刈り取って地面を隈なく探してみたのですが、この藪ではどうしようもありませんでした。

 4果以上の多果のドングリについては、成熟する可能性などほとんど無いに等しい
のだから、観察なんかしてないで発見次第直ぐにでも採集してしまえば良かったのですが、後悔先に立たずですね。今回のところは、その姿を写真に収められただけでも、運が良かったと思って諦めるしかないのでしょう。

 現物を入手出来なかったのは非常に残念ですが、セクション15-5で予想した通り、1つの殻斗に6つの堅果を包含した形態だけでなく、2つに分裂した殻斗に3つずつ堅果を包含した形態(同セクション表15-5中 : 3果3果統合型殻斗)も存在することが今回の結果から実証出来ました。この点に関しては、大きな収穫だったと思います。