雑記076. 2012. 5.26
“ 羽化する直前のタマバチの蛹 ”
昨年の5月25日に、コナラの殻斗(果軸)に形成された虫瘤からタマバチの仲間が出て来ました(*)。驚いたことに、このタマバチはこれまで紹介してきたクヌギ、ウバメガシ、アラカシの堅果に形成された虫瘤の主とそっくり、と言うか実体顕微鏡で見る限り同じ種類としか思えないほどそっくりな姿形をしていたのです。
昆虫の中でもタマバチは不可思議な生態を有することで有名ですが、このタマバチに関する私の観察結果(以下の3点)に誤りが無いとすると、タマバチの中でも特にユニークな性質をもつものかもしれません。
1. ドングリの樹種(コナラ亜属、アカガシ亜属)を問わずに寄生する
2. 寄生部位によって異なる虫瘤を形成する
3. 虫瘤の形態によって、成虫が羽化する時期が異なる
コナラの殻斗(果軸)に形成された虫瘤はわりと簡単に入手出来るので、昨年の秋にドングリ探索に出掛けた際に採集してきたものを使って、成虫の形態や羽化の時期を再度検証(**)してみました。すると、今年も昨年と同じ5月25日に複数の虫瘤から堅果に寄生するタマバチと同じような姿形のものが現れました(図8-76-2参照)
* 詳細は、雑記43を参照願います。
** 詳細は、雑記71を参照願います。
そして、この時点でまだ成虫が現れていない虫瘤を解体してみると、自分の排泄物に塗れたもう1匹のタマバチを見つけました(図8-76-4参照)。こちらはじっとして動かないので、初めは羽化に失敗したタマバチの死骸かと思いましたが、虫瘤から取り出して実体顕微鏡のステージ上でライトを当ててみると、何やらモゾモゾと伸縮運動を始めました。その瞬間、これがタマバチの蛹であることが判りました。絶好の機会なので、様々な角度から蛹の撮影を試みました(図8-76-5参照)。
ドングリと戯れていると、それに関連した様々な事物から新しい疑問が次々とわいて来るので本当に興味が尽きませんね♪