雑記074. 2012. 4.29
“ ドングリと花のツーショット! ”
 爽やかな新緑の季節がやって来ました。一週間ぐらい前から、クヌギやアラカシで開花の様子を目にするようになりましたが、昨日自宅の周辺を散策していたら、アラカシの樹上でちょっと珍しい光景を目にしました。
 例年なら、ドングリの花が咲く頃には葉以外は枝に何も無いはずなのに、この個体だけ年末年始にかけて成熟したドングリがそのまま落下せず、樹上で咲いたばかりの花と仲良く同居していたのです(図8-74-1参照)。

 この個体では、成熟してもすぐにはドングリが落下せず、殻斗と堅果がいっしょに枝にくっ付いたままの状態で長い冬の間を過ごします。ただ例年であれば、どんなに遅くても4月の頭には全てのドングリが落下するのですが、どういう訳か今年に限ってかなりの数のドングリが未だ樹上に残留していました。

 これまでにも、すっかり色褪せたドングリがこの時期まで落下せずに樹上に残っている姿を他の個体でしばしば見たことがあります。ところが、もうじき5月になると言うのに、この個体のドングリは成熟したばかりの色艶を未だに保持しているのですから驚きです(図8-74-2参照)。

 通常、殻斗から外れた堅果はへその部分から急速に水分が消失するので、数週間もすれば果皮はすっかり退色してしまいます。成熟してから4ヶ月近く経った今でも、このアラカシのドングリが驚くほど美しい姿を保ち続けていられるのは、殻斗と堅果の分離(離層の形成)が微妙に不完全だったせいかもしれません。

 シリブカガシのように秋に開花する二年成の樹種であれば、花とドングリが樹上で一時的に同居(図8-74-3参照)していても全然不思議ではありませんが、アラカシでこの状況に遭遇するのはちょっと珍しいケースと言えるかもしれません。