雑記071. 2011.12. 3
“ タマバチが堅果に産卵する時期について ”
“ 明石・神戸の虫 ときどきプランクトン ” のHP(*)に、アラカシの堅果に産卵するタマバチの写真が掲載されているのを見つけました。産卵時期については、ドングリが雌花かあるいは小さな幼果の段階だと私は推測していたのですが、実際には幼果がある程度大きくなった9月中頃であることがこの写真から明らかになりました。アラカシのドングリが成熟するのが、だいたい10月末〜11月にかけてなので、産卵してから1月半〜2ヶ月ぐらいで堅果の中に虫瘤が形成されることになります(**)。
この事実に基づいて、タマバチがクヌギの堅果に産卵する時期を推測すると、ドングリが成熟するのが9〜10月頃ですから、成虫が羽化したばかりの7月下旬〜8月上旬ぐらいではないでしょうか。
昨年、クヌギの堅果に寄生したタマバチの成虫を観察すると、産卵管の長さが僅か1mm程度しかありませんでしたので、クヌギの殻斗を貫いて果皮の内側に産卵するのは到底不可能であろうと私は考えていました。ところが、タマバチの産卵管は細くても十分な強度が備わっており、殻斗の上からは無理だとしても果皮(〜0.5mm程度)の上からであれば、十分産卵が可能であることを冒頭のHPの管理人様に教えて頂きました。
産卵時期についてはずっと悩まされてきたのですが、たった1枚の写真で全てが氷解してしまいました。やはり、百聞は一見にしかずですね♪
* “ 明石・神戸の虫 ときどきプランクトン ” : http://mushi-akashi.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-cb8e.html
** セクション9を参照願います。
これまで、クヌギとウバメガシの堅果に形成された虫瘤からタマバチを羽化させてきましたが、アラカシの堅果に形成された虫瘤だけは未だ成功していません。そこで、もう一度羽化に挑戦するために、今年も服部緑地で虫瘤入りのアラカシの堅果をたくさん採集してきました(図8-71-2参照)。
虫瘤からタマバチの成虫を羽化させるには周囲の環境が重要だと思いますので、今回は室外の植木鉢の中にタマバチが寄生した堅果を入れて自然な気象条件の下で放置することにしました(図8-71-3参照)。いつもは室内に転がっているドングリが室外にあるのを見て、愛猫のルーカス君が不思議そうに見つめていました。
アラカシの虫瘤に寄生する幼虫は、クヌギやウバメガシと同種のように見えるので、後者と羽化が同時期だとすると、7月頃にこれらを室内に戻して密閉ケースに移し変えれば、羽化した成虫を確実に捕獲出来るはずです。
もう一つ、見た目は堅果に寄生するタマバチとそっくりなのに、羽化の時期が全く異なるコナラの殻斗(果軸)に寄生するタマバチ(***)についても、あらためて成虫の姿と羽化の時期を検証してみることにしました。
検体には、今年の10月に泉北ニュータウンの雑木林 [ 所在地 : 大阪府堺市 ] で採集したものを使うつもりでしたが、その中のいくつかを事前に解体した結果、あらたな発見がありました(図8-71-4参照)。
*** 雑記43を参照願います。
昨年、コナラの虫瘤を解体した時には、クヌギやウバメガシの堅果に寄生していたものとは姿形が違う幼虫(****)を目撃したのですが、今回解体した虫瘤の中には、どれもクヌギやウバメガシの堅果で見たのと同じような幼虫が入っていました(図8-71-5、図8-71-6参照)。
前回虫瘤を解体したのは昨年の10月末でしたが、虫瘤の内部は湿っており、幼虫は植物から栄養分を吸収しながら成長する途中だったのかもしれません。一方、今回解体したものは、殻斗(果軸)の内部がすっかり硬化しており、栄養分を摂取出来なくなった幼虫は出すもの(糞)を出しきって、既に冬眠モードに入ってました(図8-71-5参照)。おそらく、今回観察したものがこの虫瘤に寄生するタマバチの幼虫の本当の姿だと思います。
**** 実は、前回目撃した幼虫(セクション9-2:図9-2-6参照)が、この虫瘤を形成したタマバチの幼虫ではない可能性が出てきました。詳細については、以下のHPにある2012年10月15日付のコメント欄を参照願います。
http://mushi-akashi.cocolog-nifty.com/blog/cat22090103/index.html [ 明石・神戸の虫 ときどきプランクトン ]
前回は、コナラの殻斗(果軸)に形成された虫瘤を、捕虫網で口を覆った瓶の中に入れて、自宅の縁側に面したサンルームに放置しておきました。この部屋は、外気温の変化に追従しやすく、虫瘤を室外に置いたのと同じ様な状況が再現されます。それが功を奏したのか、この虫瘤からは非常に高い羽化率(75%)で成虫の姿を拝むことが出来ました。今回も前回と同じ方法で、成虫が出現するのを待ちます(図8-71-7参照)。