雑記069. 2011.11.17
“ あのドングリは、どうなった....? ”
同じ個体に着果した全く違うタイプの幼果(*)の続報ですが、以前撮影したものは9月の末に姿を確認したのを最後に、残念ながら行方が判らなくなってしまいました。こういう特異な形態のものは、多果と同様に、ほとんどが成熟する前に脱落してしまう傾向があります。
そんなわけで、申し訳ありませんが姿を消す直前に撮影した写真しかお見せすることが出来なくなってしまいました(図8-69-1参照)。図中の2種類の幼果の内、この個体の99%以上は左側の形態(以下、標準形態と称する)で、その他の1%未満が極端に殻斗が小さい右側の形態(以下、特異形態と称する)です。
* 雑記053を参照願います。
このように、成熟前に脱落してしまう可能性が高いことは、これまでの経験から十分に予測していたので、他のシラカシの個体でも類似のものを探しておきました。その中から無事に成熟したものを2つ紹介します。
1つは、図8-69-1のドングリと同じ掖谷公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] の個体で撮影したものです(図8-69-2参照)。撮影時には特異形態は既に完熟しており、枝から採集しようとすると殻斗から堅果が零れ落ちてしまいました。
もう1つは、深田公園にあるシラカシの個体で見つけたものですが、同園を訪れた日には特異形態は既に落下していました(図8-69-3参照)。両者の堅果のサイズを比べてみると、特異形態の方がやや小さいことが判ります。また、図8-69-2のドングリもそうですが、特異形態は標準形態に比べて成熟するのが若干早いようです。
さらに、これと同じ個体で形態が異なる3果が落下していました(図8-69-4参照)。多果は普通の単果に比べて成熟しにくいことから、このような特異形態の3果が成熟するのは極めて稀ではないかと思います。
今年は、自宅周辺の緑地や公園に植栽されているシラカシで、これまでに無いぐらいたくさんの多果が結実しました。見た事も無い多果の形態や事例について、たくさんのデータを得ることが出来ましたので、これから順次報告していきたいと思います。
(追記)
その後の調査の結果、同じ個体のドングリなのに殻斗の形態が大きく異なるのは、殻斗の元になる器官のサイズの違いが関係していることが明らかになりました。詳細は、セクション26を参照願います。