雑記067. 2011.11. 5
“ 立派なチリメンガシの樹 ”
大阪府立大学の中百舌鳥キャンパス [ 所在地 : 大阪府堺市 ] はとても緑が豊かで、構内の至る所にたくさんのドングリの樹があります。種類も豊富で、ブナ、イヌブナ、ハナガガシ、ミズナラを除く全ての樹木がここにあります。また、それらの中には京阪神の緑地や公園ではあまり見かけることがないチリメンガシ(*)もあります(図8-67-1参照)。
* チリメンガシ : 学名: Quercus phillyraeoides f. crispa 。ウバメガシの一品種。
正門から少し入ったところの左手に、チリメンガシが3体並んで立っていますが、内1体は幹直径が30cm以上ある大きな樹です。チリメンガシは御苑 [ 所在地 : 京都府京都市 ] にもありますが、こちらの方がはるかに立派でほぼ毎年のように大量に結実します。一昨日訪れた時も、樹下には既にたくさんのドングリが落ちていました。
チリメンガシとウバメガシの樹はよく似ていますが、葉っぱを見ると両者の違いは明らかです。前者は葉縁が裏面に大きく反り返って葉身が細長です。それに比べて後者は平坦か、あるいは葉縁が少しばかり反った楕円形です。
一方、ドングリの形状についても両者の間で微妙な違いがあります。堅果の形態は瓜二つですが、殻斗のを見るとウバメガシよりもチリメンガシの方が刺々しい感じがします(図8-67-2、図8-67-3参照)。
感覚的な殻斗の違いを具体的に表現するために、採集した両者の殻斗を実体顕微鏡で拡大してみました(図8-67-4参照)。すると、ウバメガシの殻斗の表面を覆っている鱗片が殻斗の表面に貼りついたように見えますが、チリメンガシは一つ一つが浮き上がっていることが判りました。また、鱗片の先端を見ると、ウバメガシは赤黒くてまるで足の小指の爪のように見えますが、チリメンガシは薄茶色で鋭い鉤爪の様な形をしていることが判りました。
ところで、大阪府立大学の構内にあるたくさんのウバメガシの中に、図8-67-5のような個体を見つけました。この個体の葉は、普通のウバメガシよりも細長くて、葉縁も裏面側にかなり反っていました(図8-67-5、図8-67-6参照)。この個体に結実したドングリの殻斗は、見た目はチリメンガシのように刺々しくはありませんでしたが、実体顕微鏡で拡大すると、個々の鱗片が微かに浮き上がっているように見えました(図8-67-7参照)。このように、両者の中間形質をもつ個体を見ると、確かにチリメンガシはウバメガシの仲間であることがよく判ります。