雑記065. 2011.10.26
“ 太古と現代を繋ぐスダジイの樹 ”
 荒山公園 [ 所在地 : 大阪府堺市 ] は京阪神でも有名な梅林園(約3ha)で、毎年2月中旬〜3月中旬の開花期になると大勢の観光客が訪れます。ここには梅の木だけでなくドングリの樹もたくさん有って、シーズンともなると園内の至る所でたくさんのドングリを落とします。京阪神では珍しいハナガガシも植栽されていますが、何と言ってもここの目玉はもの凄い数の多果を結実するスダジイでしょう(*)
* 詳細は、セクション3-1-2のスダジイの項を参照願います。

 先日二年ぶりにここを訪れたら、相変わらずそのスダジイの樹下にはたくさんの多果ドングリが落ちていました(図8-65-3参照)。熱帯地方(東南アジア等)に分布するシイ属(クリガシ属)の仲間には、1つの殻斗の中に2〜3個の堅果を包含したドングリを結実する種類が多いのですが、この個体に結実する多果ドングリの量も半端ではありません。

 この個体に多果がどのぐらい発現するのか、言葉で説明していても埒があきませんので、今年受粉した果軸にある単果と多果の幼果の数を比較してみました。対象とする検体は、私の手が届く範囲にある枝から無作為に採取した5本の果軸です。

 表8-65-1がその結果です。この表を見ると、少なくとも半分以上が2果、乃至3果の幼果であり、この個体がいかに大量の多果を発現しているかあらためて実感しました。あと、表中の2果と3果の数量を比較してみると、3果の方が若干多いことが判りました。太古の昔にシイ属が出現した時の原初形態が3果であり、そこから現代に至るまでの間に殻斗に包含される堅果が退化減数してきたことを、このデータは間接的に物語っているのかもしれません。この個体は、現存するスダジイの中でも希少価値が高いと言えるのではないでしょうか。