雑記062. 2011.10.13
“ 4本の花柱をもつシリブカガシの雌蕊 ”

 先日、長居植物園で採集したシリブカガシの雌花を実体顕微鏡で観察してみました。国内に自生するマテバシイ属には、マテバシイとシリブカガシがの2種類があります。前者の雌花序は、1つの総苞が1〜3個の雌蕊を包含しています(図8-62-1参照)。一方、後者の雌花序も前者と全く同じ形態ですが、前者よりも多くの雌蕊(1〜5個)を包含するものがあります(図8-62-2、図8-62-3参照)。

 雌蕊単体の構造についてみると、マテバシイ属の場合、雌蕊の先端には3本の花柱が突出しています。花柱が3本あるのは、マテバシイ属の雌蕊が3枚の心皮(大胞葉)から構成されていることを意味しています。私は、これまでにも様々な場所からシリブカガシの雌花を採集してきましたが、花柱が3本あるものしか見たことがありませんでした。
 ところが、今回採集した雌花序には、どういう訳か3本の花柱をもつ雌蕊に混じって、4本の花柱をもつものが多数存在していたのです(図8-62-4参照)。

 この結果には、正直我が目を疑ってしまいました。無作為に採集した雌花序であるにも関わらず、相当な割合で4本の花柱をもつ雌花が存在していたのです。シリブカガシの円筒型の花柱には、ツクバネガシやアカガシの杓文字状の花柱(*)に見られるようなスプリットした形跡は見られませんので、本質的に花柱が4本以上存在することは確かです。

 花柱が4本存在する理由として、
シリブカガシの雌蕊を構成する心皮が、一般に考えられているように3枚に限定されず、4枚のものも併存している としか考えられませんが、本件についてはじっくりと時間をかけて原因究明に当たりたいと思います。
 * セクション11-2のツクバネガシの項を参照願います。

(追記)
調査の結果、マテバシイ属の雌花序だけでなくコナラ属のものでも、雌蕊を構成する心皮の数には2〜5枚のバラツキがあり、ドングリにはそれに対応した花柱が存在することが判りました。詳細については、セクション14を御覧下さい。