雑記618. 2026.10.13
“ 多果にソックリです♪♪ ”
前回、シイの実公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] で見つけたリング状の鱗片で構成された殻斗をもつマテバシイのドングリについて紹介しました(図8-618-1参照)。採集したドングリの殻斗の構造や果軸との接続状態を見ると、あらためてマテバシイのドングリが単果の集合体(複数の雌花序が合着したもの)というよりも、コナラ属の多果に酷似していることがよく判りました(*)。
* このHPの中で繰り返し述べていますが、私はマテバシイ属の殻斗が複数の殻斗が合着して構成されたものだとは考えておりません。なぜなら、私のこれまでのフィールド調査において、マテバシイ属の殻斗が合着したものでないことを示唆する事象なら数多く目にしてきましたが、その逆は現在に至るまで皆無だからです。
図8-618-2は、殻斗の鱗片がリング状で2つの雌花序が合着してできたように見えるマテバシイのドングリです。瓦状の鱗片だと、果実と果軸の接合部の構造が不明瞭ですが、リング状の鱗片だと1つの殻斗の元になる器官から殻斗が出現している様子や、果軸と果実の接合面積が合着したように見える雌花序の個数に関係なくほぼ同じであることがはっきりと見て取れます。
一方、図8-618-2とよく似た形態のシラカシの2果のドングリ(堅果分離型殻斗)を図8-618-3に示します。図8-618-2のマテバシイのドングリと比べてみると、果実と果軸の接合部の構造や殻斗が堅果を包含する様子が酷似していることは一目瞭然でしょう。
通常、図8-618-3のような一つの殻斗が複数の堅果を分けて包含するタイプ(=堅果分離型殻斗)の多果では、それを構成する複数のドングリの一つだけが果軸に接するような形をしています(**)。図8-618-2のドングリも、コナラ属の多果と同様に、2つの果実の一つだけが果軸に接するような形をしています。これは、マテバシイ属のドングリがコナラ属の多果と同質であることを示す確かな証拠と言えるのではないでしょうか。
** 雑記603の図8-603-5を参照願います。

(補記)
余談になりますが、鱗片がリング状の殻斗をもつマテバシイのドングリでとても珍しいものを見つけました(図8-618-5参照)。
コナラ属の多果(堅果分離型殻斗)の場合、通常2つの果実のうち果軸と接している方が大きく、果軸から離れたものは前者と同等か、あるいは前者に比べて矮小なのが一般的です。ところが、このドングリは2つの果実のうち果軸と接している方が矮小(不稔)で、果軸から離れたもう一方が結実しているのです。これは、雑記603で紹介したアカガシの2果のドングリと同様、コナラ属の多果では稀に見る特異な形態なんです☆